【こんな人に向けて書きました】
環境問題って複雑ですよね。
表面化している現象だけでも、水質汚染、土壌侵食、森林面積の減少、気候変動など多岐にわたるし、現象の裏側にある要因やメカニズムは相互に絡まりあっている。
根本的に環境問題を解決するのになにかやりたいと思っても、どこから手をつければいいかわからないという人が多いのでは?
『地球に残された時間 ―60億人を希望に導く最終処方箋―』(レスター・R・ブラウン)は地球規模の環境問題が起きている要因、メカニズムを簡単にまとめ、解決策の方向性を提示してくれています。
手広く環境問題の状況を取り上げているので、世界各地で起こっている環境破壊の現状や、原因をざっくり知ることができます。
その分、現状のデータや解決策のロジックもざっくりとしている感が否めません。
ぶっちゃけ、環境問題のメカニズムや解決策のロジックをしっかり検証する必要がありますが、それはまた別の話で。
まずは環境問題の全体像をざっくりつかみたいという方におすすめでは?
今回は『地球に残された時間』の内容をかいつまみながら、ブラウン氏が言う解決策に意見してみます。
【文明崩壊の歴史から見る環境問題解決の方向性】
結論からいうと、ブラウン氏は
「気候の安定化」「自然システムの修復」「貧困の根絶」「人口の安定化」に取り組む必要があると説いています。
ミソは文明崩壊の歴史と安全保障の概念から、環境問題解決の糸口を考えていること。
これまで文明の多くが、環境破壊によって引き起こされた問題によって崩壊しています。
マヤ文明が滅んだ主原因は、森林消失と土壌の侵食による食糧不足。
帝国の拡大を支えようと、農地にするためどんどん木が倒され土地が焼かれるにつれ、土壌侵食が起こり、農地の生産性が損なわれました。
食料の供給が需要に追い付かなくなった結果、秩序と安全が崩れ、文明そのものも崩壊したと考えられています。食べ物がなくて生きるか死ぬかってときに法やルールなんて守ってられないですもんね。
僕たちの社会も同じ歴史を繰り返しそうです。
なぜなら、自然が供給してくれる食料、資源を無視した経済・政治を行っているから。
【いま支払うべきコストはなにか?】
いまの市場経済には、間接コストの視点が欠落しています。
これは致命的な盲点です。
市場で計算される直接コスト(人件費、機材費、利益など)よりもずっと大きくなることもある間接コストを計算に入れていないんですね。
ガソリンを例にとって間接コストをみてみましょう。
原油を掘り出し、精製してガソリンをつくり、米国のガソリンスタンドまで運ぶコストが、たとえば1リットル当たり約0.79ドルだったとします。これが直接コスト。
間接コストには気候変動のリスク、呼吸器疾患の治療、油の流出への対応、石油へのアクセスを補修シュルために米軍を中東に配備していることなどがあるが、そのコストは1リットル当たり約3.17ドルとなります。
大豆など穀類を見てみると、また別の見えないコストが出てきます。
穀類生産には灌漑用水が必要ですが、灌漑用水量は年々減少しています。
灌漑農業が盛んなカリフォルニア州では、都市へ水を送るために灌漑用水が使われるようになったこともあいまって、1997年には約36,000㎡あった灌漑用水が2010年には約30,000㎡に減少したと推定されています、
共有資源である水は、その限界供給量を考えずに使い続けるとあっというまに底をついてしまいます。
水が足りなくなった時の対策や供給量回復に必要なコストも、いまの市場経済では扱われていません。
【自然システムを尊重する経済の在り方】
今日の経済学は、「地球を支える自然のシステムが持続可能に提供できるギリギリの量はどれぐらいか」をほとんど考えていません。
機械技術や農業技術が発達し、1世紀前より食糧生産量がかなり増えたとはいえ、経済システムの根本を見直さないと、食料の需要が供給量を上回り、世界規模の食糧不足が起こるでしょう。
森林を減少させ、土壌を侵食し、帯水層を枯渇させ、漁場を崩壊させ、気温を上昇させ、気温を上昇させ、氷床を融かしている経済システムのままでは、持続可能な社会を作ることは不可能です。
そのために安全保障の再定義をすべきだとブラウン氏は考えています。
そして提言したのが「プランB」。
いまの安全保障は軍事面のみで考えられていますが、今後は「食料安全保障」として自然環境の保護を含め、安全保障の政策を行うべきだという考え方ですね。
プランBは「気候の安定化」「自然システムの修復」「貧困の根絶」「人口の安定化」を目標とした文明を救うためのプラン。
自然の資源・食料供給量を守っていくには、何が必要かという視点で考えられています。
マヤ文明は森林減少と土壌侵食によって滅びましたが、現代は帯水層の枯渇、漁場の崩壊、山岳氷河の融解、海面上昇なども同時に出てきています。
これら環境破壊によって引き起こされる現象は、相互に影響しあっていて、なにか一つだけ解消するだけでは足りません。
対症療法的な考えで一つずつ解消しようとしても、全体の解決には至らないわけです。
根本的に現状を解決するには、自然のシステムが持続的に提供可能な食料量、資源量を考慮した経済にシフトし、自然保護の施策を実行する必要があるとブラウン氏は書いています。
ブラウン氏はいくつか方法を唱えていますが、
間接コストへの課税、再生可能エネルギー利用、自然システム修復への予算作成に大きく分けられます。
エネルギーに関して言えば、化石燃料の燃焼にかかるすべてのコストを反映するよう炭素への課税。
ガソリンには気候変動、石油業界に対する税制融合措置・補助金、軍隊による石油供給の防衛、原油流出、自動車の排気ガスに関連する呼吸器疾患の治療などの間接コストが含まれている。
すべて足し合わせると、1リットルあたり約3.2ドル。これに米国のガソリン価格0.8ドルに上乗せすると、1リットルあたり約4ドルになります。価格に間接コストが含まれるように課税します。
また石油燃料だけでなく、水といった共有資源にも税金をかけ、過剰な資源・エネルギー利用にブレーキをかけるという狙いですね。
そして植林、土壌保全、漁場の回復、帯水層の安定化など行い、自然システムが回復すれば、貧困地域の食料供給量の安定につながり、人口の安定化を助けます。
食料供給が安定すれば、小家族への移行が加速し貧困から抜け出す一助になり、それぞれの取り組みが連鎖的につながって解決につながるという魂胆です。
ざっとした案の大枠はこんな感じですね。
【短期的/長期的施策で環境問題を解決】
環境問題は地球で起こっていて、僕らの日々の生活、行動が地球に多かれ少なかれ影響を与えています。
でも、僕らにとって日々の暮らしと環境問題はつながっていません。
環境問題を悪化させていくと、地球に悪いのは理屈ではわかるが、共感が伴っていない。
人々の暮らしレベルからアプローチし、価値観に働きかけ、日々の生活、行動を環境問題を解決するように仕向けていくことが重要なわけです。
「プランB」は危機感に訴えかけ、政治に働きかける大きな施策。
これまで環境会議が開催され、環境破壊によって引き起こされる事実・データをもとに今後の解決策が議論されていますが、大きな変革は起こっていません。
せっかく議論をしても、世界に届かずどこか上滑りのまま終わっている気がします。
そんなわけで環境問題解決は、短期的施策と長期的施策と分けて僕は取り組んでいきたい。
短期的施策は、ブラウン氏の間接コストへの課税のように強制力と即効性がある施策。
なるべく早く環境破壊をストップさせるのに、効果があります。
しかしそれだけでは、効果に限界がありますし、なにより持続しません。
僕ら一般人の価値観にまで影響を与えないからです。また既得権益が絡んでくるので、政治家などプレイヤーが入れ替われば政策・施策もいつ無くなるかわかりません。
長期的に見て、持続的に環境問題を解決していけるような手を打つことが重要です。
そのために、人の価値観・考え方を変えていくことが重要だと僕は考えています。
地球や自然を尊重し大切にする心(もちろん人と人の間にも)が広まれば、間接コストに課税をわざわざかける必要も究極無くなるのではと思うからです。
たとえ技術が発達して、下水を飲める水に変えられるようになっても、生活する人の考え方が変わらなければ、いつか水は底をつくと思います。
欲望は際限なく増え続けますから。
一見、遠回りのようでも価値観・考え方に変化を起こしていくことが一番効果的で近道です。
価値観・考え方は行動・習慣から変わります。
啓蒙には限界があります。○○すべきだという話を聞いても、暮らしの中に実感がなければ共感しにくいので、実際に行動を変えようとはあまりなりませんよね。
人の価値観・考え方に働きかけるには、なにかしら共感が必要です。
短期的/長期的施策どちらも打っていかなければいけません。
短期的にはなるべく早く環境破壊をストップしないといけない。短期的にストップさせるだけではなく、持続可能な社会を実現するために価値観をシフトさせる長期的な取り組みも必須です。
僕が一番やりたいのは、暮らしレベルで変化を起こし、環境問題のためのアクションに共感を持ってもらえる素地を作ること。
草の根レベルの運動も大事だし、暮らしの在り方やシステムを変革することも大事。
具体的なアイディアや提案はまだ持っていませんが、以下の本で学びながら、アクションを起こしていきます!